1999 09 05『鳥の谷』

さて、世の中にはそれこそいろいろな匂い、臭いがあるが、決まった場所で決まった臭いがするということもしばしばある。 カレー屋のまえに行くとカレーの香がするが、これも場所に特定された臭いであろう。今回取り上げるのは、ある場所で決まった臭いがするというものである。ある決まった臭いのする、その場所は、高速道路上なのである。いや、正確には、高速道路を利用するようになって気が付いたというのが正しいのであろうが、なんせ、あっという間に車で通り過ぎてしまう為、そのことを他人に話しても、「えっ?そーなの、そんな臭いしたっけ?」という人が大半である。従って、結構淋しい思いをしていた。

そんな矢先、ある友人と同じ車に同乗する期会があった。で、くだんの場所にさしかかる所で、「この辺りで独特の臭いがする」という話になった。私もそれは気づいていたと言うと、「おおお!だれも気が付かんので淋しい思いをしていた。あれは良い匂いだ!」と言うのである。

その匂いを良い匂いと思っている彼は、その場所に近付くと車の窓をあけるか、外気導入にするのだそうだ。
一方、私はその臭いに好感を持っていなかったので、車の窓は締め切り、内気循環にして極力その臭気が車内に侵入しないように努力していたのである。 さて、そこで二人の見解の相違となるその臭いの元は一体何か? 彼は、「火山性温泉の硫黄系のガス臭だ。」と言い、私は「あれはトリ小屋(養鶏場)の臭いだ。」と言い張っていた。しかし、決定的な物証も証人もないままその論議も忘れ去られていた。
ある日、私はGPSカーナビ搭載の車に乗る機会があった。それに、少々時間もあった。そこで、ふと、この事を思いだし、臭いのする高速道路の場所にガイドするようにセットし、路線選択に「高速道路を使わない」などと指示してその場所を目指した。
目的の場所に近付くに連れ、その臭いの元となっているのが、私の予想の正しさを裏付ける様に思われた。
しかし、最初の高速道路間近の目的地に行くにはどうも、大型四駆車ではかなりの無理があるようなようなのである。
それに、目的地手前で見つかった養鶏場には、肝心の鶏が居ない。しかも、数が少なくこれが臭いの元だと断言するには少々根拠が希薄と思われた。
さて、そこで、復活した「鉄の馬」の登場である。 まずは、臭いの尤も強く感じられる高速道路の側道にたどり着く。そこから、探索を開始するのであるが、ちょうどその辺りは、複雑に沢が入り組んでいて、一筋縄では探索が難しい。この沢ずたいでもないし.....ここでもないし......と放射状に探索をし、ある切り通しを通過した途端、目の前に現れたのは、鶏舎の谷であった。思わず、宮崎駿監督の「天空の城・ラピュタ」にでてきた、パズーの炭坑町を連想し、同時に「鳥の谷」などとつぶやいてしまった。そして、その「鳥の谷」の鶏舎には、しっかりと白い鶏が詰め込まれており、それなりの臭気を放っていた。
どうじゃ。やっぱり、トリ小屋(養鶏場)の臭いぢゃろうが。


まいったかぁ!!!
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